テープの味(疑似日記part22)

疑似日記 (byササキ)

ペットショップに行く機会がありました。

店内は女の子らしい,ファンシーな装いで統一されており,様々なペット関連グッズが並んでいます。アクリル製のケージの中には,小型犬が何匹かいます。くつろいでいるようにも見えるし,やることがなくてうんざりしているようにも見えます。

哺乳類をペットとして飼ったことはありませんが,たしかにこういう存在が家にいると,雰囲気が温かくなるのかもなと思います。これまで飼ったことがあるのは,金魚やカブトムシなど,体温を感じないような連中ばかりなので,そういう感覚とは無縁でした。むしろ,触ると冷たいやつばっかりです。

そんなことを考えていると,一匹の犬がカリカリと音を立てているのに気が付きました。ケージの隅で何かしています。

よくみると,ケージにあいた丸い穴をふさぐセロハンのテープを舐めているのです。それも半狂乱で。穴を外からふさぐように貼ってあるので,犬には裏面が向いています。接着剤の部分が美味しいのかわかりませんが,一心不乱に,こそぎ取るように舐め回していました。

いつまで見ていても,ずっとそうしています。やがて物足りなくなったのか,他の部分のテープを牙でめくろうとしていたので,さすがに店員さんに声をかけました。セロハンが消化によいとは考えにくいですから。店員は剝がれそうになった部分をちぎって,そのまま作業に戻っていきました。

犬は,あいかわらず丸い穴の方のセロハンをなめています。チャオチュールをなめる猫でも,もう少し理性的な気がするのですが,これでいいのでしょうか。私より詳しいはずの店員が気にしていないならいいのかもしれません。

家に帰ってから,机にあったガムテープの裏を舐めてみました。なんの味もせず,損した気分だけが残りました。

 

※疑似日記とは?
https://psychseeing.org/gn1-gijinikkinitsuite/

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました